「透明な螺旋」を読んで

東野圭吾 著 2021 ㈱文藝春秋

 ガリレオシリーズ長編第10弾です。

 東野先生の本は、個人的に読みやすいなぁと思います。すっと物語に入っていけます。  

 序盤はおなじみ草薙刑事、その部下の内海の二人だけで話が進んでいきます。二人がキャラ立ちしているのでなんの違和感もなく読み進められ(ドラマ化されている事もあり、頭のなかで映像が浮かびやすいのかもしれません)、湯川先生の名前が出てきたところで、「あ、そうだこれはガリレオだったんだ」と思い出した次第です。

 犯人捜し、どのようなトリックを使って、という謎解きより、「なぜ犯行に至ったのか」という動機に焦点が当てられていました。読むことで動機が明らかになっていきますが、その理由を知り、切ない気持ちになります。『透明な螺旋』というタイトル、『愛する人を守ることは罪なのか』という帯の言葉に考えさせられます。

 読了後、「知らなくてもいい事は、知らなくていい。知らないフリを貫いてもいい。それが希望になるのなら・・」と、私はそんなことを思いました。ですが、気付かなかったフリを、自分にも他人にもし続ける状況を考えると、やはり切ないです。

 そして、この作品では、これまで触れられていなかった湯川先生のバックボーンにも触れられていました!(大事)!私のなかで、湯川先生の人物像が、また少し肉付けされました。 

 最後に。血のつながりがなくても信頼できる、島内親子とナエさんのような関係が羨ましいと思いました。また、園香の、流されやすい性格がもどかしかったです。自分の足で、頭で、しっかりと生きていってほしいと思いました。

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